スマホやPCで動くAIを速くする技術として、SamsungのProcessing-in-Memory(PIM)が話題になっています。半導体メディアのchipsandcheese.comがHot Chips 2026での内容を報じており、Hot Chips 2026: Samsung’s Processing-in-Memoryで設計の狙いを確認しました。ここでは確認できた事実と、個人の端末選びにどう関係するかを分けて整理します。
この記事の結論
SamsungのPIMは、DRAMのバンク内に演算ユニットを直接組み込み、メモリとプロセッサ間のデータ往復を減らす設計です。メモリ帯域のボトルネックを解消し、スマホやAI PCなどエッジ端末でのローカルAI推論性能と電力効率を大きく高めます。ただしメモリ側のハード構造に関わる技術のため、既存端末へ後から追加はできません。搭載製品名や時期、価格差、実測値は今回確認できた範囲に含まれていません。
メモリチップの内部に演算回路を置くのがPIM
PIM(Processing-in-Memory)は、その名のとおり「メモリの中で計算する」という考え方です。今回確認できた内容の中心は、DRAMのバンク内に演算ユニットを直接組み込むという点にあります。バンクとは、DRAMの記憶領域を区切った単位で、データを読み書きする実際の入れ物にあたる部分です。従来はここから取り出したデータを外部のプロセッサへ送り、計算が終わったら書き戻す、という往復が前提でした。PIMはその入れ物のすぐ隣に小さな計算回路を置き、往復そのものを減らします。
言い換えると、材料を倉庫から工場へ運んで加工していたところを、倉庫の中に簡単な加工台を設けるような発想です。運搬距離が短くなれば、待ち時間も、運ぶために使うエネルギーも減ります。

詰まっているのは計算能力ではなく、データの往復
なぜメモリの中に計算回路を入れる必要があるのか。背景には、端末内でAIを動かすときの詰まりどころが、演算そのものではなくデータの移動側に寄っているという事情があります。今回の技術がメモリ帯域のボトルネックを解消するために設計されている、という点は確認できた事実です。
ここから先は、その事実を実用面に置き換えた分析になります。生成AIの推論では、モデルが持つ大量のパラメータを繰り返し読み出しながら計算を進めます。演算ユニットの能力が高くても、読み出しが追いつかなければ、プロセッサはデータが届くのを待つだけの時間を過ごすことになります。この待ち時間はバッテリーも消費するため、体感速度と電池持ちの両方に効いてきます。PIMは、その待ち時間の原因である往復回数を構造から減らそうとする設計だと理解できます。
外部バスを速くするやり方と何が違う?
メモリの帯域を広げる方法自体は、これまでもありました。メモリ規格の世代を上げる、インターフェースの幅を広げる、動作周波数を上げる、といった外部バス側の高速化です。ただし、こうした手法はデータが外へ出ていくこと自体を前提にしているため、通り道を太くしても、運ぶ量と運ぶ距離は変わりません。距離が残る限り、消費電力も一定量は残ります。
PIMの違いは、通り道を太くするのではなく、外へ運ぶデータの量そのものを減らす方向にある点です。同じ「速くする」でも、アプローチの層が一段違います。これが、性能と電力効率の両方に同時に効くと説明される理由につながります。

効き目が大きいのはバッテリー駆動のスマホとAI PC
今回確認できた事実として、この技術が向くのはスマホやAI PCといったエッジ端末での、ローカルAI推論です。エッジ端末とは、クラウドに送らず手元で処理する側の機器を指します。手元で処理できれば、通信の遅延がなくなり、入力した内容を外部へ送らずに済むという利点もあります。
一方で、手元の端末は電源と冷却の制約が厳しく、デスクトップ機のように電力を積み増して速度を稼ぐことができません。だからこそ、消費電力を増やさずに待ち時間を減らせる設計が、据え置き機よりも端末側で価値を持ちやすい、という整理になります。
実用化段階と言えるのはどこまで?
確認できたのは、DRAMバンク内に演算ユニットを組み込むPIM技術が実用化段階に入り、エッジ端末でのローカルAI推論性能と電力効率が大きく向上する、という内容までです。逆に、今回確認できた範囲に含まれていない項目もはっきりしています。
具体的には、搭載される製品名、市場に出る時期、上位モデルとの価格差、実際のアプリでどの程度速くなるかという実測値です。これらは推測で埋めず、未確認のまま扱います。技術が成立していることと、手に入る製品として並ぶことは別の段階だからです。
今日の買い替えを急ぐ話にはならない
PIMはメモリチップ側の構造に関わる技術です。つまり、すでに持っている端末へソフトウェア更新で後から足せる種類のものではありません。恩恵を受けられるのは、対応したメモリを積んだ世代の端末に限られます。
そのため、今この記事を読んで店頭へ向かう必要はありません。今日の時点で買える端末にPIMが載っているかどうかを確認できる情報は、今回の範囲には含まれていないからです。逆に、端末の故障や業務上の必要で今すぐ買い替えが要る場合、この技術を理由に購入を止める根拠にもなりません。将来の世代で効いてくる話であり、今の選択肢を良く見せたり悪く見せたりする材料ではない、という位置づけです。

次の世代で差が出るのは搭載製品とソフト側の対応
ここからはブログ側の補足として、次の発表を見るときに情報が集まりやすい観点を整理します。以下は今回確認できた事実ではなく、判断のための切り口です。
| 観点 | なぜ判断に効くか | 現時点 |
|---|---|---|
| 搭載される製品と世代 | 買える形になっているかが決まる | 今回の範囲では未確認 |
| 対象になるAI処理の種類 | 自分が使う機能に効くかが変わる | 推論での効果として説明 |
| ソフト側からの利用可否 | アプリが呼び出せなければ体感に出にくい | 今回の範囲では未確認 |
| 電力効率の実測 | 電池持ちと発熱に直結する | 数値は未確認 |
| 価格差 | 採用世代を待つ価値の判断材料になる | 未確認 |
特に見落とされやすいのが、3つ目のソフト側の対応です。ハードウェアに機能があっても、アプリやフレームワークがその機能を呼び出す形になっていなければ、日常の使い勝手には現れにくくなります。カタログ上の性能と体感が食い違うときは、この層が原因になっていることがあります。
この情報で動かすなら、次の一手は情報源の固定
今回の内容は、買い物の判断ではなく、次にどこを見るかを決めるための材料です。現実的な次の行動を一つ挙げるなら、Samsungのメモリ関連の公式発表と、今回参照したchipsandcheese.comの記事を情報源として控えておくことです。次の世代の端末が発表されたとき、そこにPIM対応の記載があるかどうかで、待つか買うかの判断が具体的になります。
技術としての方向性は明確で、端末内AIの伸びしろがメモリ側にあるという見立ては確認できました。あとは、それが製品としていつ、どの価格帯に降りてくるかという段階の話です。
よくある疑問
Q. PIMは今使っているスマホやPCにも効きますか?
A. 効きません。PIMはDRAMのバンク内に演算ユニットを組み込むハードウェア側の設計なので、既に手元にある端末へソフトウェア更新で後から追加することはできません。恩恵を受けられるのは、PIM対応メモリを搭載した世代の端末に限られます。
Q. PIMがあればNPUやGPUは不要になりますか?
A. 参照記事の範囲では、PIMはメモリ帯域のボトルネックを解消する技術として説明されており、演算プロセッサを置き換えるものとは書かれていません。役割としては、演算ユニットがデータ待ちで止まる時間を減らす補完的な位置づけと読むのが妥当です。
Q. 搭載製品名や発売時期は分かっていますか?
A. 今回確認できた情報の範囲には、具体的な搭載製品名、発売時期、価格差、実測値は含まれていません。これらは推測せず、次の世代の正式な発表を待って確認する項目として扱っています。
買う前にあわせて確認したい記事
スペックや価格だけで決める前に、必要な環境や選び方も確認しておくと失敗しにくくなります。




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